東京文化学園:理事長の部屋

新渡戸稲造の書「上善如水」

−2001年5月−

 先日、研究会で大学セミナーハウス(八王子市)に行ってきました。この施設は、大学の教員、学生の研究、学習、交流の場として設けられ、短期大学も準会員として参加しています。ホームページの「設立の由来とその歩み」では次のように記されています。

 「戦後の新制度下、学生数の急増、大学の規模の拡大は大学教育のめざましい発展を招来する一方、この状況が、教員と学生の人間的接触の希薄化をもたらし、「大学教育とは何か」の根本問題を考えようとする動きをうみ出すことになりました。この考えのもと、1962年(昭和37年)有志たちが指導教員を中心とする学生のグループへの研学、修練、交流の場を提供するための必要性を認識し、首都圏の大学や財界の多大の協力を得て行動を起こし、文部省に申請・認可されました。」

 この大学セミナーハウスの食堂の壁に「上善如水 稲造」の額が掲げられています。この言葉は日本酒の銘柄にも使われていますが、もとは中国の老子の言葉です。老子は2000年以上前の中国・春秋時代の思想家で、生没年は不詳、自然無為への復帰の必要性を述べた人です。

 「上善如水」は老子が書いた「道徳経」第8章にある「上善若水」から来ているもので、「上善は水のごとし」と読み、その意味は、「水のようであることは最上の善。」です。このあとに「水はよく万物を利して争わぬ。…争わぬがゆえに とが がない。」という意味の言葉が続きます。(カメラを持っていくのを忘れたので、この次に行くときには写真を撮ってきます。)

 本学園にある「心清者福也」(心の清き者はさいわいなり)と通じるものがありますが、こちらは新約聖書の「マタイによる福音書第5章8節」の言葉です。新渡戸稲造先生の思想が、東洋と西洋にまたがる、広いものであることがわかります。

参考文献:稲田孝著「老子を読む」勁草書房、1982



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