卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。ご父母の皆さまにも心からお祝いを申しあげます。
今朝、飛び込んできたニュースによると、日本時間の今朝4時頃にアメリカのシアトルで大地震がありました。早速、交換留学の生徒が行っているカナダの学校に問い合わせましたが、離れているので被害はないとのことでした。地図で見ると350キロぐらい(東京から仙台ぐらい)離れています。
さて、東京文化学園は、ご承知のとおり、新渡戸稲造先生と森本厚吉先生が力を合わせて作り上げた学校です。100年前に新渡戸先生は英文で「武士道」、副題が「ソウル・オブ・ジャパン」(日本の魂、あるいは日本人の魂)という本を英語で書いて日本人の心をアメリカに紹介しました。その後、英語からフランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語などに翻訳され、世界中で読まれた本です。
このように魂、あるいは心を大切にした新渡戸先生と、その愛弟子の森本厚吉先生は、国際社会で通じる人を育てようとして、この学校を作りました。国際社会では、国籍が話題になります。国籍がないと、顔がないようにアイデンティティがない人になります。「存在」が認められなくなったり、権利が認められなくなったりします。国際社会で活動するということは、国籍をなくすのではなく、いろいろな国、違った国が集まり、社会を構成しようとするのです。ですから、ある人はどの国の人かということが重要になるのです。
日本の人は日本人の顔が必要です。他の国の人とは違うのです。しかし、一人一人の日本人を見ると、また違った顔をしています。自分の顔を持っているのです。違った顔だから区別が付きますし、考え方も違います。それをたがいに認め合うことが、国際社会で必要になります。
顔というと、本学園ではスマイルが強調されています。笑顔、微笑という意味です。笑うことは表情の中で最も高級なものだそうです。ところで、「笑う」という意味の英語にはスマイルのほかにラーフがあります。スマイルは微笑ですが、ラーフというのは大笑いです。テレビのお笑い番組を見て笑うのはラーフです。
相手を理解して笑顔を作るのがスマイル、相手を受け入れた表情がスマイルです。笑いかける相手がいないとスマイルができません。本校の校歌では、3Hを歌ったあとに、「乙女は笑ひてただ拓き行く」と歌います。3Hをスマイルで仕上げ、味付けるのです。
ところで、2月3日の産経新聞の夕刊に新渡戸先生関係の記事が出ました。新渡戸先生の功績を称えるための活動をする「財団法人新渡戸基金」という団体が岩手県の盛岡市にあり、昨年10月には新渡戸セミナーハウスを岩手県東和町に作りました。この団体が「維持会」を作ることになり、本学園も東京で協力することになりましたという記事です。個人会員ですと、毎年3000円以上を新渡戸基金に寄付してくださいというのが維持会の趣旨です。4月から維持会が発足しますので、ご紹介しておきます。もちろん、本学園独自の募金活動も行っております。
では、卒業生の皆さん、スマイルを忘れずに新しい社会に向かって進んでください。