東京文化学園:理事長の部屋

トーストの話

−2000年12月−

トーストって何?

トースト  トーストというと、食パンを切ったもの(1切れ)をトースターで焼いたものを指します。かつてはトースターが貴重品であったので、火鉢で焼いたり、七輪(炭火のコンロ)で焼いたり、ガスコンロに網を載せて焼いたりすることもありましたが、今では見られなくなりました。トースターも中央にニクロム線(発熱体)があり、両側に切った食パンを1枚ずつを入れ、片面ずつ焼く方式のものでしたが、今では1切れのパンの両側にニクロム線があり、同時に両側が焼けるものが主流です。

 このトースターから出てきた食パンの1切れ(トーストです)にバター(健康を気にする人はマーガリン)、ジャムなどを付けて食べます。ハムとか、チーズとか、オムレツとかを載せて食べることもあります。
 パンの厚さは1センチから2センチ、このごろはかなり柔らかい食パンもあり、食べやすくなりました。

 このような説明で十分だと思っていたら、かなり違うトーストに外国で出会いました。どうも上の説明は日本のトーストに限られるようです。
 どこが違うかというと、パンの種類とトーストの食べ方が違うのです。トースターも違うことがあります。
 食パンは切り口が長方形のものは少なく、山形のものであったり、平たいものであったりします。柔らかいものはなく、かなり緻密(チミツ)です。中は白だけでなく、漂白していない小麦を使った茶色いものや、焦げ茶色のものもあります。厚さは7,8ミリで、日本で言うサンドイッチ用の食パンの厚さです。やや酸っぱい味がするパンもあります。
 これをトースターに入れます。イギリスで出会ったトースターは、食パンの10センチ角の1切れが3枚が同時に入るような、細長いものでした。これ以外は、日本のトースターとほぼ同じでした。
 トースターから出てきてからが違います。まず間違いなくバターかマーガリンを塗ります。トースターから出てきたパンは温かいからバターでもマーガリンでも溶けてしまいます。次にこのパン1切れを半分に切ります。これで食べやすくなります。どうもここまで進んだものがトーストのようなのです。


トースト
カナダで食べたトースト。コーヒー付きで2ドル(約160円、税込み)。
バター付きで、ジャム、ピーナツバターなどの小さいパックが必要なだけもらえます。


 主婦がトーストを作ってくれるときは、トースターから出たパンの1切れにバターかマーガリンを塗ってから包丁で半分に切ってくれます。食卓で自分のパンにバターかマーガリンを塗ったときはバターナイフで切るのですが、バターナイフは刃が付いていませんから、切るというよりは、パンを押しつぶして2つに分けるという方が正しいような感じになります。
 これにジャムを「載せ」て食べます。けっしてジャムを「付け」たり、「塗っ」たりして食べるのではありません。というのは、載せるジャムの量が多いのです。レストランで出てくるジャムの小さいパックは15グラムぐらい入っていますが、それ位を日本でいう「1枚のトースト」に載せるのです。それで、「付ける」とか「塗る」とかいうよりも「載せる」という方が正しくなります。日本のトーストに付けるジャムは「ペンキを塗るようなもの」と言えますが、アメリカ、カナダ、イギリスなどではモルタルを塗るようにジャムをたくさん付けるのです。

 このようなトーストに出会い、それもあちこちで出会うと自分の思っていた「トースト」のイメージが崩れていきます。そして、「トースト」は一通りものを指すのではなく、いろいろの「トースト」があるのだということを実感します。視野が広がります。どれが正しいというものではありません。
 どうです。一度、このアメリカ式(カナダ式、イギリス式)トーストを食べてみませんか。ジャムが口の中でいっぱいに広がります。でも、ちょっと甘すぎるかもしれません。



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