-1- 第355号 | 平成18年7月12日 |
理事長 森本晴生
来年で創立八十周年を迎える本学園は、新渡戸稲造先生から札幌農学校で薫陶を受け、その教えに感銘を受けた森本厚吉先生によって新渡戸先生の教育理念を具現化するために創立されました。初代校長には新渡戸先生をお迎えしました。
本学園の精神的基盤である両先生の教育思想を理解するだけでなく、その意義を確認し、現代教育に展開するための調査研究を行い、本学園の教育活動に寄与するだけでなく、広く社会に知らしめて貢献することを目的として、昨年、「新渡戸・森本研究所」を立ち上げました。
この二人の資料は以前から短期大学図書館が中心となって収集し、新渡戸祭などでその一部を展示公開しています。これからは、研究所としても両先生の資料の収集、整理を進め、社会にアピールを行います。
さらに、両先生の考え方を社会に示していくために、多目的ホールを含めた建築の構想を練っており、関係各位のご協力を得て具体化することを計画しています。新渡戸・森本精神を示すだけではなく、「大きな夢を育てる小さな学園」である本学園の活動の中でこれを展開し、さらに社会教育の場としても、社会に貢献ができることを願っています。
▲小学校初めてのランチデー
新渡戸稲造 その(3)
「社会ニーズと建学の精神」
学務理事 升野 龍男
「強き者でも、賢き者でもなく、最も俊敏に変化できるものだけが生き残る」。ダーウィンは「種の起源」でこう述べている。「不易流行」も同じような概念である。「易」という象形文字はカメレオンを表している。つまり「不易」とは、どんなに世の中が変化しても、ころころと変えてはいけないことを意味する。逆に、「流行」は変わるもの、状況変化に従ってどんどん変わっていくもの、あるいは変えていかなければならないもののこと。「変化こそ常態」という考え方である。
教育を取り巻く環境変化は激しい。「勤しむ双手、活く頭、寛き心」という3 H 精神の目指すところも、いま短大が標榜しているように「いのち、やさしさ、おもいやり」といった方が時代にマッチしている。3 H 精神の実践は、この社会ニーズに対応するために必要不可欠な心構えと考えればよい。哲学者・梅原猛は「真理とは、その時代に最も説得力持った仮説である」と語っているが、その通りだろう。「真理は汝を自由にする」だけでは解りにくい。それよりも、「目からウロコの落ちる考え方や論理に出会う喜び」の方がピンとくる。そうすれば授業は「面白授業」や「わくわく授業」になる。
「建学の精神」などと金科玉条のごとくあがめていると、いつの間にか時代からそっぽを向かれてしまう。
建学の精神を時代に合わせて翻訳し直し、活火山のように情報発信してゆく。これが「新渡戸・森本研究所」の役割である。今年の学園祭のテーマも「[新]たに[渡]る[戸]を開こう」に決まった。