野尻学荘資料室準備委員会の頁


野尻学荘クラブでは、長年に亘る学荘の歴史を保存するためのアレをしています。
お手持ちの資料がございましたらどしどしお寄せくださいましね。

「第二回(昭和八年)野尻学荘募集」
のごく一部を正式公開に先立ち特別公開いたしましょう。


第二回YMCA長期キャンプ

野尻學荘

−ご両親方へ−

趣意

−青少年の生活指導−

野尻學荘は、夏期休暇を利用して、青少年の生活を教育的に指導せんとする長期キャンプである。場所は、信州野尻湖畔の一隅、水青くして白樺繁り、妙高、黒姫の山々を仰ぎ見るところ、設備は簡素なれども、衛生的である。かゝる自然と設備との下に、我等は、青少年と共に起居し、時には青少年の家族を迎へ、別に述べるが如き長期キャンプの特色を全ふせんがため精進せんとするものである。今夏は野尻學荘も第三回目であるが、内容は年毎に充實し、申込みは毎夏、定員の倍を越え、結果は参加者青少年の限り無きよろこび、父兄の涙せんばかりの感謝をうけたのである。御子息の、力強くして明るい性格の助長を希望さるゝ父兄は、我等を信じて御子息を野尻學荘へおくられん事を切望す。

−特色−

 特色の一
 都会生活の反省
繁雑なる都会生活を暫く離れて、美しくして偉大なる自然の中にあって単純生活をなす事は、自己の日常生活を反省し、将来の活動のために新たなる理想と感激とを懐かしめるのである。

 特色の二
 長期間の個人的指導
長期キャンプの特色の第二は、教育をうける期間が長いと言ふとこである。一ケ月をキャンプで過ごすならば、一學期以上通学すると同じ時間になるのである。此の間に、一人一人の性格を観察して、その長所を助長し短所を矯正するように、科學的な方法に従って個人的に教育することが出来る。

 特色の三
 統一ある標準による生活指導
家庭、學校、社會が同じ見解で青少年に働き掛けるところに教育の意義が全うされる。 然し乍ら現代に於いてはしばしばこの三者の見解が異なり、青少年は不統一なる生活を余儀なくせしめられる事が多い。然るに教育キャンプに於いては青少年の全生活が同じ基準に依って統一されているのである。されば青少年が、暫く不統一なる日常生活から離れて統一ある基準の下に、全生活を指導されることは教育上すこぶる意義深いと言はねばならぬ。

 特色の四
 個性と社會生活の助長
人間には個性と社會性との両面がある。両者は事實上分けて考えることの出来ないものではあるが、教育としては此の両者の教育を別々に行ふ必要がある。それは絶えず人とばかり接してゐると個性を失ひ、又獨りゐるものには社會性を失ふ事によっても知ることが出来る。短期キャンプに於いては、社會性の指導を専らとするのであるが長期キャンプに於いては、個性と社會性と二つ乍らを充分に発達せしむる機會を与える事が出来る。

−設備−

(一)建物
四ケ又は六ケのスプリングづきベット備付の家屋四ケ
食堂兼集會家屋
学習室
家族のための家屋(ホテル式、洗面器、スプリングづきベット備付の室五室、社交室)
本部用家屋(會議室、主事室、荘長室、倉庫)
醫務専用家屋(診察室、静養室四室)
指導者用家屋(指導者室十室)
風呂場(浴室、洗面場)
寫眞暗室、倉庫、艇庫

(二)寝具
ベット(スプリング及マット付)毛布(二枚つゝきのもの三組)
マクラ、シーツ、カバー

(三)運動
陸上運動場(テニス、バレーボール、バスケットボール等)
水上運動場(飛込ミ臺、エンヂンボート、ボート数隻、和船)

(四)音楽
ピアノ、蓄音機、ラヂオ、チャイム

(五)
作業
木工、土木、塗料用具、寫眞現像用具、顕微鏡、携帯用テント及用具一切、陶器

−指導者−

グループ指導者はいづれも心理學、教育學を専攻し、本會少年部に於いて、青少年の實際指導に當りつゝある方で、キャンプ指導の世紀の教育を受けた方々ばかりです。一人の指導者は四人または六人の少年と起居を共にして指導する。

荘    長   本會少年部委員長    小林彌太郎
主    事 本會少年部主事 鈴木 榮吉
グループ 本會少年部指導者 中村藤太郎
指 導 者   同 大塚 昇
  同   同 斎藤 勇一
  同   同 佐藤 邦明
作業指導者   同 佐藤 勇
水   泳    
動 植 物   額田 年
ボ ー ト    
運    動   五味 正夫
其他交渉中

−醫師−

キャンプには醫師専用の家があって、東京帝國大學小児科の先生が滞在して御世話下さいます。

東京帝國大學醫學部 小児科醫學士 長竹 正春

−家族の訪問−

(一)御家族の訪問を歓迎いたします。
  御家族のために家族用家屋が準備してあります。
  御子さん方を連れられて二、三泊滞在され、御子息方のキャンプ生活ぶりを御覧下さい。

(二)訪問者の費用は次ぎの如くです。
  三食 六拾銭 一泊 五拾銭 雑費 十銭
  ボート賃(學荘のボートを利用する際はガソリン代として別に申受く)

−期間−

(一)自七月二十三日(日) 至八月二十六日(金) 五週間

(二)滞在期間は、二週間以上なら幾週間でも差支えありませんが、選定は、五週間滞在者から選定し、尚人員満ざる時のみ、五週間以下の滞在者を選定することといたします。

(三)七月二十三日(日)午前六時二十分上野發の列車にて東京を出發する参加者には特に指導者がキャンプ地まで案内する。

−費用−

(一)申込金
  参圓也、申込みと同時に申し受く。但し滞在費中に加算せず。

(二)滞在費
  最初の二週間   金 十七圓也   (一日一圓廿二銭の割)
  三週間滞在の者 金 二十四圓也 (一日一圓十四銭の割)
  四週間滞在の者 金 三十圓也 (一日一圓七銭の割)
  五週間滞在の者 金 三十五圓也 (一日一圓の割)

(三)分納
五週間滞在のものに限り分納を妨げず。

−資格と申込−

(一)資格 中等學生

(二)人員 約二十名(外に指導者見習いとして中等學校卒業者五名を募集す)

(三)選定 面談の上定む。人員に限りがありますから、早く申し込まれたほうが便利です。

(一)申込 申込みは七月二十日までに下記へ。(但し定員に満ち次第締切)

東京市神田區美土代町三ノ三
東京基督教青年會少年部

(二)間合 七月二十三日以後の申込みに関する問い合わせは下記へ。

長野縣上水内郡桐久保 野 尻 學 荘

(三)参加者心得 申し込みと同時に携帯品及参加者の心得るべき注意事項に関する印刷物を送る。

(四)七月二十日までの申込者には時期を定めて身體検査をなす。

(五)七月二十日までの申込者には醫師の診断書を要す。
  特に本會委員藤本武平二博士は次の所にて特別に診断の便を與ふ。

東京市牛込區神楽坂 藤 本 醫 院

(六)七月以降の申込者にして診断書なきものも参加しうるも、この場合はキャンプ地にて健康診断し、診断の結果、キャンプ生活がかえって健康に害があるが如き者は、歸宅を求むることがある。

−委員及主事−

東京基督教青年會性格教育研究委員会

委員長   醫學博士   藤本武平二
明星學園長 赤井米吉
正則中學校長  今岡信一良
實業家 小林彌太郎
元少年審判官  三井久治
主事 鈴木榮吉

−参加者諸君へ−

樂しい生活の中に次の諸點を伸しませう。

1.天文や興味を見出してそれを伸ばしませう。
2.自分から進んで物事をなす習慣を助長しませう。
3.他人と協力して考へたり仕事をしたりする習慣を助長しませう。
4.生活の中に宗教的意義を見出だしませう。
5.氣もちよい禮儀を養ひませう。
6.保険の習慣をつけませう。
7.學習の仕方を學ひませう。
8.豫習復習の習慣を養ひませう。
9.特殊の技能を練習しませう。

プログラム

プログラムは参加者諸君、両親、指導者の三者の希望を基礎として作成します。
但し起床、食事、水泳、舟遊び、學習、就寝の時間は豫め定める。


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