-1- 第338号  TokyuBunka Times  平成12年12月10日

学園の願い

--開かれた目を養い 実行力のある人に--

教育には哲学がある

「近頃、急速に教育のあり方が世間の関心事となってきました。先々が不透明で不確実であればあるほど関心が強くなるようです。
 教育が注目されるのは、そこに哲学があるからです。こうあるべきという目標と信念が宿っているだけに、時世が不安定になると教育に心のよりどころを求めるようになります。二十一世紀を目前にして目標と自信の喪失がそうさせていると思えます。
 近年、海外に出かける青少年が目立ってきました。国際性を学ぶ機会ですが、同時に自分さがしの旅でもあります。自分は一体、何なのかを探り、生きる意味をみつけ、自分をみつめる好機になります。
 最近、山田洋次監督の「十五才−学校IV」が上映されました。“十五の頃、あなたの「学校」はどこにありましたか”と映画のキャッチフレーズは問いかけます。
 青年前期は、人生とは、青春、友情、自分とは……を探る時です。
心のふるさとになりうる学校が本当の学校で、今日、学校が学校たりえているかという原点からの問いかけが関心を呼んでいます。

東京文化の催眠術

 先般、卒業生のKさんからお便りが届きました。「娘はようやく、東京文化の生徒らしくなってきて、家に帰って来て色々と話をしてくれることを聞いていても、どこで、どうやって東京文化の催眠術にかかったのかと、思わずニッコリしてしまいます。娘は今朝、英検のテストに出かけてゆきました。ダメもと、と言いつつ、赤いマフラーと赤い手袋を身に付けたところは、気分だけは頑張るつもりのようです」と。
 じわじわ−ツと学園生活の空気になじんできて、意欲と活力の日々を送るようになった娘を喜ぶ親ごころが伝わってきました。人は環境の子と言いますが、生活環境、校風が人を変えるという作用の大きさを改めて実感しました。

ニ十一世紀への布石

 今年は初代校長、新渡戸稲造博士の名著『武士道』刊行100年の節目でした。
 『武士道』発刊100年を記念して数々のイベントがありました。
七月、生誕の地、盛岡で“日米友好の集い”が開催され、ルーズベルト元大統領の曽孫が特別講演をし、クリントン大統領からはメッセージが寄せられました。
 10月、東京の国連大学で記念シンポジウムが開かれ、さらに、盛岡に隣接する新花巻では新波戸セミナーハウスのオープニングが知事ら200名程の集いとなりました。
 ことに、新渡戸研究家の第一人者、佐藤全弘氏(関西外大)による特別講演で日本の女子教育にふれ、その業績に本学園の初代校長時代が語られたことは特記できるものでした。人間性を育てる学園の存在感を高めたことは学園関係者に心強い講演となりました。
 『武士道』の副題“日本の魂”が示すように、日本人の価値観、精神文化を解き明かした名著は、二十一世紀を展望する布石になっていると確信します。“太平洋の架け橋たらん”という志はわが校にも花開き、善意め使徒と称された精神は人との魂の触れ合いを大切にする学園にしっかりと継承されています。
 そしてまた、創立者森本厚吉博士、没後50年の年でした。
 学園の母体、財団法人“文化普及会”をデモクラシーの旗手吉野作造博士、作家有島武郎氏らと設立し、生活改善をめざして全国規模の実践活動をしました。一方、事業として、出版部、文化アパートメント(理想的な合理生活)、女子文化高等学院、消費経済研究所等の役立や月刊誌「文化生活」発行等を実践しました。いずれも社会奉仕事業でした。
 これらの人道的な活動は″実践・実行″ の大切さを示してくれたものです。

未来を照らす志

 今や、日本の教育機関のすべてを備えもつ学園になり、一貫して教育の本流をゆく学園だけに社会の期待にこたえる使命は思う以上に大きなものがあります。中規模校またはミニスクールであるだけに、心の通いあった人格のふれあいの中で魂を養い育てる恵まれた条件が整っていることは学園の誇りです。創立時の熱い思いを根幹に据えて、さらに、未来を照らす志をもって役割を果たす時がきました。
 ことに地球時代で、いい関係を深める最善の策は“対話”にあります。対話には話しの内容がものをいいます。見識見聞を広め、自分の考えを自分のことばで伝える人材育てが求められています。
 森本晴生理事長は、「開かれた目を養い、マナーとスマイルをもった資質のある人材を育てるのが願うところ」と語っています。
一人ひとりの心の奥に創立以来の学園の思いが伝わって、その人らしい人格の光がにじむ存在に成長していくことを願っています。


役員人事

辞任

理事  箕山保男(8月17日付)

表彰

○中学高校


 中本孝中高校長は、平成12年11月6日財団法人東京都中野区教育振興会から教育功労の表彰を受けました。

○学園教職員永年勤続表彰

今年度は次の3名の方が該当され、去る10月13日感謝状と記念品が贈呈されました。

幼稚園−豆鞘美砂子
短 大−石森真子
学 園−石井裕子

学園相談室

 今井祐子カウンセラー担当。毎週月曜日11時から5時まで開室しています。


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