-4- 第341号 | 平成13年12月10日 |
短期大学 |
「17回国際栄養学会議に参加して」
栄養学 梅村詩子
8月25日成田発、9月3日成田着で、17回、国際栄養学会議に参加発表し、さらにオーストリア、チェコの食文化研修を含めて海外教員研修を体験した。
国際栄養学会議はウィーン郊外で開催されたが、四年に一度の開催なので、昨年から学会に要旨を提出し、準備を進めてきた。
“近代の栄養の展望”という大きな目的の中で、代謝、低栄養、臨床栄養、慢性疾患の予防等と様々なセッションに別れて発表があり、学会には百ケ国以上の国の参加があった。私たちは“循環器疾患の予防の為の栄養の役割”というセッションで、『大学生と成人男女との魚介類摂収の違いによる血清脂肪酸への影響』というテーマでポスター発表に参加した。どのセッションもシンポジウムと50〜80演題のポスター発表があり、盛んにディスカッションが行なわれた。
『魚介類』を摂取すると、中に含まれるn3系脂肪酸の血小板凝集抑制作用により、血栓を形成しにくく、心筋梗塞や狭心症等の虚血性心疾患の予防につながると言われている。逆に油脂や肉類の摂りすぎは体内で血栓を作りやすい生理活性物質を作るので、n3とn6のバランスが重要である。
今回本学女子学生と、先に分析した日本の食習慣の異なる漁村や都市の国内成人や米国人の食物摂取状況、血清脂肪酸を比較分析した。我が国成人は魚介類を摂取している人は多いが、学生や米国人では少なく、その反映として血清中n3系脂肪酸は我国成人9〜12%、米国成人3%、本学短大生は6%であった。摂取頻度と血清脂肪酸との有意な相関から、若年者の魚介類の摂収の減少や、油脂や肉類の摂取増加が認められた。
食生活が欧米化し、特に若年者は、食生活の乱れも指摘されていることから、『魚食文化』の継承、将来の循環器疾患の予防のためには、若年時からの魚介類、緑黄色野菜などを含む適切な食習慣の構築が重要である。毎年、学生実験の中で、健康・栄養のアセスメント(評価)として、身体計測、生理機能検査、血液性状検査を実施しているが、年々総コレステロールの高値、n3系脂肪酸の低値を示す学生が多く、現在コレステロール高値や魚介類摂食の健康教育を学内の先生方と協力し進めている。
さらに教育の中で健康教育プログラムを考え、若年者の適正な食習慣の構築並びに、栄養士としての適切な栄養教育に導きたいと思う。
学会の合間にウィーンでは、ハプスブルグ家の栄華の誇るベルヴェデール宮殿、シエーンブルン宮殿、シュテファン寺院等見学した。
さらにモーツァルトのザルツブルグでの生家やウィーンでの住居を訪ね、さらに音楽会を楽しむことができた。
オーストリアの食文化の体験としては、市場を回ったり、試食した。ホテルの朝食ではハムやソーセージ、チーズというコンチネンタルの食事が多く、オーストリアでは、日本に比べ魚介類の摂取が少なくマス、サーモン、ニシンや川魚等が摂取されているようだ。
教員研修助成を経て、国際学会発表と、オーストリアの旅と食文化の体験という、貴重な経験ができ、今後の東京文化での教育や研究につなげたいと思う。
家政科体内における糖類・・・・複合糖質
食品学 玉城武
私たちの体内で糖類はどのような形をしているのでしょう。
体内の多くの糖類は血糖としてブドウ糖が0.1%位であるが、肝臓中にはグリコーゲンとして貯蔵されている。生理機能を持った糖質は脂質やタンパク質などと結びついて存在している。
糖脂質とは、その分子の中に糖質と脂質の両万を含んでいて、糖質とはOH基をたくさん持っていて水に溶けやすく、脂質は炭化水素の長い鎖から成り立っているので、水に溶けにくい。
したがって糖脂質分子は、この両方の特性を併せもつ複雑な性質を備えている。
糖脂質は細胞の表面に存在して.細胞を識別するマーカーとなるほか、生物学的になにかしら重要な働きをしているが、その役割は謎に包まれている。このあたりが炭水化物の研究における未開の分野である。
ところで、脂質(あぶら)には単純脂質と複合脂質があり、その大きな役割はエネルギー源と細胞膜など外と内を隔てることである。脳には単純脂質は全く存在せず、体の脂肪組繊に貯えられて必要なときに肝に動員されて燃やされる。もし、脳に脂肪が貯えられるとしたら、頭が重くてかなわないだろう。脳の働きのためのエネルギーはブドウ糖が頸動脈を通って脳に導かれて、それをまかなっている。
脳は複合脂質の宝庫であり、含量が多いばかりでなく、種類も多い。糖とタンパク質が結びついたものは糖タンパク質で、胃腸管粘液、精液、涙液のような分泌液、さらに血清や卵白に存在するほか、赤血球のような細胞の膜にも存在する。また、ある種の酵素はタンパク質の他に糖を含んでいる。
このように生体中に存在する糖質はその形が複雑である。私たちは食品成分表から各種栄養成分を求めているが、それらの成分は単独に存在しているものは少なく、お互いが複雑に格みあって存在しているのである。
私たちの食品の栄養成分としてみた炭水化物は、その複雑な絡みあいが食品の栄養的価値と深く関係しているかも知れない。