-6- 第357号 | 平成19年3月6日 |
小学校 |
図工科 木下陽児
子どもたちの歌声と楽器の演奏がホール全体を包み込む小学校の音楽の会。毎年3年生はオペレッタを演じます。今年の演目はオスカー・ワイルド原作の『しあわせな王子』でした。 この劇のために全校児童が図工の時間に「舞台装置作り」としてかかわり、一人一人の作品がセットとして織り込まれ本番の舞台に登場しました。また毎年出展している東京都私立小学校児童作品展『ほら、できたよ』にもこの舞台装置を出展し本校関係者のみならず他校の方々からも好評を博しました。 |
▲オペレッタ「幸せな王子」 | |
▲「ほらできたよ」での風景の様子 | 小学校の音楽の会やほら、できたよ展で内外の方々の目に触れることとなる舞台装置ですが、 作品として仕上がった表の印象の裏側には、子どもたち自身の体や色感・光を扱うなど造形教育として重要な要素が詰まった制作過程が隠されているのです。 | |
絵の具に触れる・練りこむ!低学年生は手で描けるフィンガーペイントなどで、ぐちゃぐちゃどろどろ絵の具と格闘しました。混ぜた絵の具はパン工場のように粘土に練りこんで、 王子の台座や建物の壁に仕上げました。からだ全体を使って粘土をこねたり、粘土に色を混ぜながらレンガらしい色を見つけていく過程で、自分の身体への意識や色の感覚、混色の技法を育成していくことになるのです。 さらにお友だちと自分の粘土の一部を交換してレンガの色にバリエーションを持たせました。 粘土を交換するとお友だちの粘土は温かく感じます。交換するという行為で他者への理解・触れ合いを感じることもねらっています。 |
▲粘土を体で感じる一年生 | |
▲石造りの教会 |
石のような色に染める4年生は舞台に必要な石造りの教会を創り出すために、スポンジペーパーという材料を 様々な灰色に染めました。一つ一つのお面のデザインには、見た人が幸せになれますようにという思いを込めました。 | |
光を飾る・感じる5・6年生は、建物や教会の窓を光を通す材料で制作しました。 普段意識することの少ない「光」がもたらしてくれる心理的な《温かさ》を感じて欲しいという意図があります。 |
▲「うまく染まるかな?」 | |
▲ステンドグラスのように | 子どもたちが作る一つ一つの部分は本人たちの思い入れが詰まった小さいけれど他に変えがたいひとかけらです。そのかけらが一つに集まり舞台装置として本番を飾り、歌や音楽そして演技と合わさり大きな大きな空間に結実した瞬間、学年の枠も越えて子どもたち全員で造ったもの・創ったこととして共に感じ喜ぶことができました。 | |
▲オペレッタ『幸せな王子』のフィナーレの様子 | ||
小学校の図工の舞台装置作りはそんな掛け替えのない一人一人の力と、それを合わせて築き上げる大きな夢とでできていると強く感じます。 |