新渡戸稲造 その(8)
足下の明るいうちにグッドバイ
常務理事 升野 龍男
[稲造]今まで7回にわたり、私の考え方をタイムスで現代的に翻訳し直してくれてありがとう。
[龍男]博士の考え方がグローバルかつ普遍的でしたから、それほど苦労しませんでした。それより「世界に通用する心の在り方」、これを今の若人達にどう体得させてゆくか。これが我々の次の具体的な重要課題ですね。
[稲造]そうだと思うよ。マザーテレサが先年日本を訪れた際、こう指摘したと教えてくれた。「これほど物の豊かな国もない。反対にこれほど心の貧しい国も見たことがない」と。
[龍男]私も永年経営に携わっていますが、資本主義に対する日本人の考え方を修正すべき時期ではないかと思います。
[稲造]資本主義は倫理とセット。そう言いたいのではないかな。
[龍男]マネジメントという概念を経営とか管理というように訳してますが、「活性化」の方が良い。捉え方が重要です。
[稲造]その通り。エデュケーションも「教育」ではなく「発育」。上からではなく、生徒一人一人の応援団であるべき。
[龍男]その発想で学園の発育の仕組み作りを考えてきました。
[稲造]どのぐらい出来たかね。
[龍男]方向性と制度的なもの、つまり土台を作ることは出来たと思います。それを学園名称変更で宣言したわけです。でも、まだまだ課題は山積。
[稲造]これからどうしますか?
[龍男]私は新渡戸イズム継承のたいまつ1号。出でよ!たいまつ2号、3号。人は権力ではなく感動で動く。そういうマネジメントを期待します。
[稲造]長岡藩家老の河井継之助曰く「進むは人任せ、退くは自ら決す」。そうなんだね。
[龍男]次なる伝道者にバトンタッチする時期。世紀をまたぎ博士と会話できて光栄でした。
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