「第66回 野尻学荘だより」

No.66−4

発信日:2001/08/18(Sat) 12:52




 背負い慣れない大きなザックから、シュラフ(寝袋)がはみ出ています。
ザックの中には調理器具、ポリタンク、これからの二日間の食料、がぎっちり詰め込まれているのです。
中学1年生のなかには、大きなザックで体がすっかり隠れてしまっているボーイズもいます。
足下はいつものビーチサンダルではなくトレッキングシューズで、はたから見てもぎこちないく見えます。
首からはタオルを下げ、みんなしっかり帽子をかぶっています。

 「アウティング」出発直前の一コマ。
慌ただしくお弁当を詰めたり、「これ以上は 荷物が入らないよ、リーダー」と困っている姿も見えます。

 アウティングはみんなで協力して、野尻学荘から離れ、学荘以外
の場所で1泊し戻って来るというプログラムです。
アウティングでは、1)グループで行動すること、2)屋根のあるところで眠らないこと、そして、3)食事は自分たちで作ることの3つの約束があります。
逆に言えばその3つさえ守れば、グループで自由に生活できるわけです。

それぞれのキャビングループの目的地は以下の通りです。
学荘にいるときに決めた自分たちのグループ名(キャビンネーム)とあわせて書き出してみましょう。

中学生

12キャビン“虫とバイバイ”
NOA(野尻学荘OB会が所有する対岸の空き地)
 ---今年新造したカッターを利用して行ってきました---

11キャビン“The プルコギチェキラー's”
大池キャンプ場泊 斑尾山

8キャビン“サダ、ヒゲがいたいのよ〜”
妙高高原ロッジ

7キャビン“ささきのかほり”
斑尾山登山後 大池キャンプ場泊

高校生

6キャビン“井の頭公園で櫂立て”
笹ヶ峰入山 黒沢ヒュッテ泊 妙高山山頂経由燕温泉

5キャビン“WASABI〜ぬきで!”
笹ヶ峰入山 高谷池ヒュッテ泊 妙高山山頂経由燕温泉


 中学生は、野外炊事で協力して生活することを強調点とした、グループがほとんどです。
大きな鍋や飯盒・まな板・包丁・食材をザックに詰め込み、目的地
を目指しました。
あるグループはカッターで野尻湖を横断し小さなキャンプファイヤーを囲んで話し合ったそうです。
 また別のグループは、山に登ることを渋るボーイズに「山頂にコンビニのローソンがあるから頑張って」と騙して、誤魔化しながら山を登ったと言う報告がありました。

 高校生の2グループは、妙高山を力強く登りました。
高校生ともなると装備も充実して、本格的な"登山"の雰囲気がみなぎっています。
 妙高山の山頂付近で2つのグループが合体し、その後はまた2つのグループに分断し、後尾の隊は予定していた路線バスの時刻に間に合わずに乗れなくなるという事も起こりましたが、最後は他のボーイズ達の待つ夕食に間に合い、一緒に食事することもが出来ました。

 ボーイズ達の生活する学荘のキャビンは、電気がありません。
しかし、屋根もあるし自分専用のベットもあります。
加えて、毎度の食事をキッチンさんに用意してもらっています。
 アウティングで彼らは、まな板を持ったり飯盒を持ったり、どう考えても直接自分には必要のないものを背負って、わざわざ不便な生活をおくりました。
今の時代に、あえて不便なことを体験することはとても素敵なことです。
 シンプルな生活は、多くの他者との交流を生み出します。
互いに協力しあったり、同じ体験をすることで、関係性は近くなります。
また、アウティングを通じて今までの生活を客観視し、学荘の「生活」を見つめ直す機会になったように思います。

 学荘の生活もあと5日。
残りの野尻学荘での生活が、ボーイズ一人ひとりの「生活」を客観視できる貴重な体験になることを期待しています。

いや、きっと何か大切なものを持って帰ることが出来るでしょう。

学荘便り66_4

(8月18日 東 貴宏:リーダーシップディベロップメント・ディレクター)


注記:この「野尻学荘だより」は会期中野尻学荘現地から直接BBSにお送りしたものを再編集しました。


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