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刃物研ぎ講習会タイトル

この講習会のねらいと期待すること

行事委員会 学生課

 手は第2の脳だといわれます。手を使うことで、人間は動物とは違った道を歩み始めました。
 いまから200万年近くも昔むかしのはなし--。そのころ、猿のように樹上生活をしていた人間の先祖たちは、地球全体の気温の低下によって食べものがなくなったため、木から降りて地上に立ちました。チンパンジーのように、おぼつかない足どりで歩きだした彼らは、樹上にいたときに身体を移動するために使っていた手で、やがて石や木の技などを持つようになります。これが道具の始まりです。
 こうして二足歩行によって自由になった手で、人間はたくさんの道具をつくっていきました。数かずの石の道具--石器--も作られます。最初の刃物は石で作られたものです。逞しい原始人の手で握られた石庖丁は、動物の骨を砕き、肉を裂き、食物を調製しました。最初の台所道具であり、調理の始まりです。
 このように道具を使い、さらに火を利用することを体得した人類は、その過程で手をいっそう器用にあやつるようになりました。手が発達することで、脳の発達もうながされていきました。まさに、手を使うことこそが、人間の人間たる特徴となっていったのです。



 東京文化短期大学の建学以来のモットーである3H精神、--活く頭、寛き心、いそしむ双手--は、手の大切さをしっかりと指摘しています。自動ドアや自動点火のコンロのように、文明の発達によって手を使うことは少なくなりました。このような時代なればこそ、手を使うことを積極的にすすめていくことは、人間らしく生きることにつながるといえるでしょう。原始の人類が、石の刃物を持つことで動物と訣別したように、いま、わたしたちは、もっと自在に刃物を扱うことによって、より人間らしい感覚、人間の力は素晴らしいものだという実感を味わうことができるのではないでしょうか。


刃物研ぎ講習会タイトル

 刃物の講習会「庖丁の選び方と研ぎ方」は、このようなねらいのもとに発足したものです。何年間か経過するうちに、いままで他校にはないユニークな催しとして定着してきています。
 幸いに、学園近くのベテランの刃物店主、中屋さんの全面的なご協力をいただくことができました。何といっても、直接に専門家から学ぶことは、たいへん価値のあることです。ここで、ふだん、わたしたちはいかに庖丁を粗末に扱っているかを、おそらく思い知らされることとおもいます。さらに、それ以前の問題として、よい庖丁をはたして選んで手に入れているかどうかについても、考えさせられることでしょう。
 この講習会は、少人数の、まさに“手づくり”の講習会です。砥石の設備の関係もあって人数も限られています。年間、何回かの講習会を実施していますから、できるだけ多くの学生のみなさんが参加され、庖丁を、そして刃物の扱い方を見直すきっかけをつかまれるよう希望いたします。
 刃物はよく知って使えば、こわいものではありません。切れない刃物は逆にこわいといいます。ここで学んだ庖丁の選び方や研ぎ方、扱い方が将来にわたって、大いに役立つよう期待しています。

昭和61年5月吉日

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