庖丁
庖丁(ほうちょう)主として料理に使う刃物、中国の古典「荘子」によれば、戦国時代(紀元前四世紀ごろ)の料理の名人として庖丁(ホウテイ)の名が出ており、庖丁の刀すなわち庖丁刀を略して我が国では庖刀、包丁と呼ぶようになった。
歴史と産地
我が国最古の遺品は正倉院にある日本刀型・片刃の全長40cm内外のもので江戸時代初期まではこの形式が使われた。
宮廷料理の伝統を残す「庖丁式」に現在使われる式庖丁は、この日本刀型にアゴのついた形で、元禄時代から江戸中期まで一般の料理にも広く使われたものらしい。
その後、調理技術の発達、料理の種類の増加につれ庖丁の種類も増えた。
現在よく使われるものについては、菜切・薄刃・刺身(蛸引)・出刃などは文化・文政年間にすでに一般化しており、柳刃(正夫)・鰻裂(江戸型)などは約50年後嘉永・安政年間に至ってその形が定まったものとされている。
現在大阪の堺では主に片刃の和庖丁が生産され、諸刃(もろは)和庖丁は武生(福井)、洋庖丁は東京付近(主に炭素鋼)と岐阜の関、新潟の残(主にステンレス)が名高い。
種類と製法
庖丁には料理用とその他の用途のものがある。料理以外に使われるものとしては、裁ち庖丁(裁縫用)・畳庖丁・皮裁ち(靴・鞄など皮革製品用)などが主である。
料理用は和庖丁・洋庖丁・中華庖丁の三種に分類される。 [※図1参照]
- 和庖丁
日本古来のもので、軟鉄と炭素鋼を鍛接し鍛造して成型する。水で焼入れし、砥石で研いで仕上る。刀身の端を細く伸ばし、木製の柄(朴の木)に差し込む。
柄には割れないように口金がはめてあり、材質によって真鍮口・洋白口・水牛口の柄と呼び、この順に高価になる。最近は黒色の合成樹脂を使用したものも出回っている。
- 菜切り
鋼(はがね)を中心にして軟鉄ではさんだ構造で、両側からほぼ同じ角度で刃がつけてあるので諸刃といい、野菜や餅切りに使用する。柄の断面は楕円形。これ以外の和庖丁は片刃のものが多い。
- 刺身(刺身=蛸引・柳刃=正夫)
薄く細長く作られ、魚を引くのに都合がよい。関西で使われるものは、やや幅広く肉厚で先端が尖っており、柳刃=正夫と呼ばれる。柄の断面は栗型。 骨なども叩けるように肉が厚く、裏(鋼の面)が凹んでいる。小型のものは「鯵(あじ)切り」とよばれ、小魚専用である。柄の断面は楕円形。
- その他
専門職用として、「鰻裂き」「蕎麦(そば)切り」「鱧(はも)切り」「寿司切り」「菓子切り」「西瓜(スイカ)切り」など、用途別に分類すると極めて多種多様な庖丁が使われている。
- 洋庖丁
明治以降、洋食の普及につれてヨーロッパから入って来たもので、本来肉切り専用なので牛刀ともいわれる。現在は一般家庭用としても広く用いられている。
製法は、全体を一枚の鋼板から打ち出して作る。(鋼の丸棒や角材を型打ち:プレス加工して作るものもある。=ヨーロッパ製)焼入れは油焼き、硬度は和庖丁より低く、弾力性を帯びている。研磨には自動研磨機を使うことが多く、柄は銘木や強化木などの耐久牲の高いものを用い、鋲で固定する。
肉切り用には300mm程度、一般用には200mm前後の刃渡りのものが使われる。120mm内外の小型のものはペティナイフ(プチナイフ)と呼び、皮むきなどに使われる。
最近、高炭素の刃物用ステンレス鋼が普及し、焼入れ技術も進歩したので家庭用や特殊刃型の庖丁はステンレス製品が大半を占めるようになってきた。
- 中華庖丁
日本と同じ東南アジア地区の製品だけに、構造的には菜切りとほとんど同じである。
柄の断面は円形で、和庖丁のように簡単には取り外せない。中国では現在でも用途により菜刀、菓刀等と呼び、庖丁とはいわない。 [※図2参照]
手入れと研ぎ方
便用後は熱湯で塩分、酸分をよく洗い流し、乾燥した場所に保管する。
片刃の和庖丁を本格的に研ぐには、荒砥・中砥・仕上砥の順に砥石をかえて研ぐ。何十回か研ぐと刃先に「かえり」(細かいビラビラ)が出るので、裏返して裏側(鋼のついた凹んだ側)を砥石にぴったりと当てて「かえり」がとれる程度に軽く数回研ぐ。
地鉄(ぢがね)は柔かいので先に減り、鋼が残って自然に鋭くなるのが和庖丁の特徴のひとつである。
諸刃のもの(菜切りなど)は両面を同じ回数研ぐ。いずれにしても砥石と地鉄のまじったどろどろした液が出来るが、これを砥面に溜めて研ぐほうが早く良い刃が付く。
購入時の注意
- 用途にあった種類、寸法をえらぶこと。
- 刃先に刃こぼれなどないもの。
- 持ってみてバランスの良いもの。
- 曲り、狂いのないもの。
- 和庖丁の場合、鋼と地鉄の境がはっきりわかるもの。
- 洋庖丁の場合、全体に適当な弾力のあるもの。
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