-1- 第350号 | 平成16年12月10日 |
学務理事 升野龍男
今年から学園祭の名称を「新渡戸祭」と変えました。これには、大きな意味があります。5千円札から顔が消えるということもありますが、それは現象面にしか過ぎません。もっと大きな意志が込められているのです。
新渡戸稲造先生が最後に校長を務めたのが、東京文化学園です。つまり当学園は「新渡戸文化の最終走者」。最終走者には、「バトンを引き継ぐ義務」があります。そうすると、その意思表明が重要です。世間では、「○○すべきだ」という「べき論」が戦わされることは多いようですが、「こうする。だから責任をとる」という話はあまり耳にしません。5千円札の顔が変わろうとした時も同様な意見が出ました。「誰かが新渡戸文化を継承すべきだ」というように。しかし「すべき」は、自ら進んで引き継ぐという意思表示ではありません。「誰かが行うべきだ」を言っているだけです。経営という観点から言うと、これほど無責任な言い方はありません。よく経営とは「選択だ」と言います。確かにこれは、ある面を衝いています。しかしそれはあくまでも一面。「選択して責任を取る」ところまで担わねば、経営主体者ではありません。ですから「引き継ぐべき」ではなく、「引き継ぐ」という意志を明らかにしなければならないのです。
かつてケネディが大統領就任演説で述べたように、「松明は新しい世代に引き継がれた」わけです。でも重要なのはその続きの言葉。「国家があなたに何をしてくれるかではなく、あなたが国家に何ができるかを問おうではないか」です。
創立80周年を「ルネッサンス80」として捉える
2007年10月16日は当学園の創立80周年記念日。我々はこの日を「文化の復興」と捉えました。文字通り「東京文化のルネッサンス」。「文化の最先端を行く老舗になる」ための節目と位置づけるということです。既に委員会を設置し、その助走作業を開始しています。検討中の幾つかの案を記しましょう。
若き日の新渡戸稲造
例えば学校は地域住民ですから、「地域貢献」を具体的推進する。「教育・研究・地域貢献」を当学園活動の3本柱とします。文化伝承としては、なんといっても「イズムの継承」。「新渡戸稲造常設コーナー」の設置をはじめ、語録の現代的解釈とその普及を考えています。既に中高では「心の教育本(14、5歳頃の新渡戸稲造を表紙に使っています=写真参照)」作りに着手。近い将来出版も考えています。また、「安心して任せられる、質の高い学園」を目指します。そのスローガンが「大きな夢を育てる小さな学園」です。
最後に、ルネッサンス80の目指す方向をお話ししましょう。豊かな21世紀造りに先頭を切って貢献することが我々の役割。伝統の上にあぐらをかいていてよいわけではありません。新渡戸先生が語ったように「目前の義務を果たす」「太平洋に架ける橋となれ」は、「次代を担う人々は、文化を引き継ぎ、発展させよ」ということ。「太平洋に架ける橋となれ」は、翻訳し直せば「混沌や停滞から脱し、豊かな明日へ向かって橋を架けよ」ということでしょう。でも、それだけでは具体性に欠けます。それは、「世界への架け橋」、「繁栄への架け橋」、「安心への架け橋」、「安全への架け橋」、そして「未来への架け橋」という「5本の橋」であると理解し直さねばなりません。とすると5つの橋を往来するためのスキルが必要となります。それは世界に通用するパスポートを保有すること。では、そのパスポートとは何でしょうか。私は「英語とコンピュータ」だと考えます。明日に五つの橋を架ける
東京文化学園では、生徒たちを「未来からの留学生」と考えています。ですから我々には、ひとりひとりの可能性を発見し、未来へ送り返す義務がある。ということから、「育」に関して新たな考え方を作り出しました。「教育」ではなく「発育」。ライバルは自分自身の夢と可能性。他人との競争ではありません。主役は生徒たち。我々は発育応援団。その手段が「教育」であるという考え方です。
学園人事
〜略〜
学園教職員永年勤続表彰
今年度は次の三名の方が該当され、去る10月16日感謝状と記念品が贈呈されました。
医 技:今井正
給食室:川口郁子
保健室:宮崎妙子