-1- 第351号  TokyuBunka Times  平成17年3月8日

ルネッサンス80プロジェクト

寛い心をもって

―卒業にむけて―

理事長 森本晴生

 寒さが厳しくなり、春の暖かさが待たれる頃、各学校では卒業準備の季節を迎えました。短期大学では、今年初めて生活学科の生活福祉専攻から介護福祉士資格を持った卒業生を社会に送り出します。学校を離れて、老人福祉施設や介護老人保健施設など、新たな環境での活躍が期待されます。

教育の基本

 学校を卒業すると、学校で習っていないことに数多く出会います。就職する場合だけでなく、幼稚園から小学校に、また小学校から中学校にすすむように上級の学校に進学する場合でも同じことが言えます。学校での教育は、基礎的な部分と応用的な部分や体験的な部分がありますが、卒業してからの体験に比べてみれば、全体として基礎的なことを身に付けているからです。
 最近は「ゆとり教育」が問題となり、授業時間を減らしたことが学力低下に影響していると言われています。「ゆとり教育」は「詰め込み教育」の反省から、教える内容を減らして基礎学力を付けさせ、知識だけでなく、考える力を身に付けさせることを目標にて、週五日制の学校教育が推奨されました。
 しかし、昨年の暮れに発表された国際調査では、わが国の読解力、応用力の低下が明らかになりました。これは「ゆとり教育」と関係があると言われています。二月一五日には文部科学大臣が中央教育審議会の総会で「ゆとり教育」の見直しを要請しました。
 本学園の中学高等学校では、「ゆとり教育」が話題となる前から、週五日制の授業を行っていましたが、基礎学力の充実のために土曜講習を行っていました。来年度からは土曜日に週六日制として、基礎学力を身に付けることにいっそう力を入れていきます。

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卒園遠足(サンシャイン水族館にて)

「活く頭」「勤しむ双手」

 基礎学力とは、言い換えると基礎的な知識を技術(スキル)です。これは本学園でいえば、「3H精神」のうちの「活く頭」「勤しむ双手」の二つに相当し、創立以来、教育の基本となっています。もちろん、八十年近い歴史の中で、社会環境の変化とともに必要とする知識やスキルは変わってきています。コンピュータなどの情報関連のスキルは近年になって必要となりました。一方で、読解力、応用力のように、これまでも、今後も必要であるものがあります。各学校とも、知識とスキルの習得にはこれまでどおり力を入れています。

「寛き心」

 本学園の特徴はもう一つの「3H精神」である「寛き心」があります。これは、違った考えを受け容れることを意味しています。学校生活でも違った考えに出会いますが、卒業後はさらに多くの違った考えに毎日のように遭遇します。医技では「寛き心」を分かりやすく説明するために「いのち、やさしさ、おもいやり」を使っていましたが、昨年から他の学校でも掲げることになりました。
 新渡戸稲造先生が昭和六年に書かれた「教職員心得」では、その第一項に「人の子を預る以上は親心を以てこれに対すること」と書かれています。当時は子どものtが数は今よりも多く、四、五人いることが普通でした。親は、家を継ぐ長男だけを大切にするのではなく、末っ子だけをかわいがるのではなく、すべての子どもが育つことを願って対応していました。学校教育でも、すべての子どもがそれぞれの個性を生かして発育していくようにすることを述べたものと理解しています。

新渡戸イズム

 本学園は、新渡戸稲造先生の考え―新渡戸イズム―を森本厚吉先生が継承し、その時代に活かした教育を進めています。これをさらに明らかにするために、昨年から学園祭を「新渡戸祭」と名付けました。心の教育目指して新渡戸先生の言葉を生徒たちに分かるように書き直した「心の教育本」を作り始めました。
 卒業生が単なる「人材」ではなく、「人財」となって、いろいろな分野で活躍することを願っています。



韓国から短大視察

 二月二日(火)、韓国・ソウルの新丘大学からわが国における栄養士養成教育の状況を視察するために本短大を訪問した。新丘大学は、専門大学(わが国の短期大学に相当)で、デザイン、環境、情報、建築、経営、保育栄養、医療の学部を持っている。チョ・ブドル社会福祉部長をはじめ食物栄養学科から四人の教授は、本短大の食物栄養専攻の実習室や実験室などを見学し、森本学長、梅村専攻主任らと栄養士養成教育について意見を交換した。


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